筋肉は裏切らない、関節は裏切る、歯も裏切る
2025年07月01日
筋肉は裏切らない こんな言葉があります。
続きで関節は裏切るというのがあるらしいです。
さらに私は 歯も裏切る と続けます。
– TCH (Tooth Contacting Habit)と噛む習慣、静かなる「歯の悲鳴」
私たちの身体の中で、筋肉は比較的“正直”な存在です。鍛えれば応え、使えば発達する。
しかし、関節はそうではありません。過負荷や老化、癖によって容易に壊れ、痛みを出す。
そして、歯。
これもまた、気づかぬうちに静かにダメージを蓄積し、ある日痛みを伴う瞬間を迎えます。
特に現代人に増えているのが、「TCH Tooth Contacting Habit)(=歯列接触癖」。
上下の歯を長時間触れ合わせてしまう無意識の癖です。
■ 歯が“ずっとくっついている”という異常
安静時、上下の歯の間には2〜3mmの隙間があるのが正常です。
ところがTCHの人は、集中しているとき・緊張しているとき・スマホやPC作業中に、歯をずっと触れさせたままにしていることがあります。
1日の歯の接触時間は通常15〜20分程度ですが、TCHがあると数時間に及ぶことも。
わずかな接触でも、顎関節・咀嚼筋・歯周組織にとっては**持続的なストレス”**となり、積もり積もって不調の引き金になります。
■ TCHが引き起こす“静かな災害”
顎関節症(TMD)の発症・悪化
食いしばり・歯ぎしりとの複合化
詰め物・被せ物の脱離や破折
歯の知覚過敏、歯根破折
頭痛・肩こり・首のこわばり
無意識の舌圧や口呼吸など他症状の連鎖
特に夜間の「クレンチング(強い食いしばり)」と日中の「TCH」が重なると、歯や顎のリカバリーが追いつかなくなることもあります。
■ 「硬いもの」は鍛えるのではなく、壊す
TCHのリスクを抱えている人ほど、食習慣の見直しも大切です。
最近人気の「硬い健康食品」――たとえば:
アーモンド
グミ(特にハードタイプ)
するめ
フランスパン
冷たい氷入り飲料での“ガリガリ噛み”
飴をかむ
これらは一見「噛む力を鍛える」「健康に良さそう」と誤解されがちですが、**TCHで疲労した歯や顎にとっては“最後の一撃”**になることがあります。
とくにアーモンドは点で当たる強い力がかかるため、歯根破折や詰め物の脱離、歯冠の割れが起きやすい食品です。
■ 「筋肉は裏切らない」が通用しない口腔の世界
筋肉は、痛ければ休めば治る。鍛えれば強くなる。
でも、歯と関節は違います。
歯は再生しない。 削れば戻らず、抜ければ義歯。
関節(顎関節)は軟骨と円板のバランス次第で、突然壊れる。
だからこそ大切なのは、“壊さない習慣”を育てること。
■ では、どうすればいいのか?
TCHに気づくこと:
「唇は閉じるが、歯は離す」が理想。気づいたときに意識して歯を離す。
「歯を休める時間」を意識的に確保:
仕事や勉強の合間に、軽く深呼吸&顎のリセット。
食習慣の見直し:
「硬いもの=歯にいい」は誤解。TCH傾向のある人には要注意。
定期的なチェック:
歯科医院での咬合バランス・詰め物の状態・顎関節の動きの確認を。
■ まとめ:静かに歯を裏切らないために
歯は“沈黙の器官”です。
音もなく疲弊し、ある日ヒビが入り、痛みとして現れます。
筋肉を鍛えるより先に、歯を守る生活習慣こそ真の予防です。
桑幡歯科医院